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東京都青少年健全育成条例改正案、ふたたびその3

前回で、『“不当に賛美”で規制されるのは怖い』と書きました。

表現には“皮肉”や“あてこすり”として、
「あえて」賛美しているかのように見せる方法もあることを踏まえた上での憂慮です。

しかし、考えてみると
これは受け手側にそういった表現方法を読み取れる力があってこその話です。

もし、表現を楽しむ人たちに想像力や感受性が欠けていて
過激な表現を『そのまま』受け取ってしまうなら、
それはやはり“危険”と言わざるを得ないでしょう。

なぜ、急にこのようなことを言い出すのかと申しますと、
あるブログの記事を拝見して、考えさせられたからです。

「青少年育成条例改正案で『火の鳥』を禁書にしよう!」


こちらは美術評論家・樋口ヒロユキ氏による今回の都の改正案に対しての記事なのですが、
さて、皆さんはこれを読んでどんな感想を持ちましたか?

タイトルからして“つかみ”はOK! といった感じですよね?

手塚治虫作品どころか、アニメでは先日惜しくも早逝された今敏氏の『パプリカ』や
再びブームを巻き起こしている『エヴァンゲリオン』においてもその“危険性”を指摘し、
さらに文学においては『古事記』『源氏物語』『こころ』といった古典すらも
容赦なく“有害”とぶった斬るその切れ味はまさに痛快そのものです。

ところが。

このすばらしい『批評性』のある文章を「そのまま」受け取って
文句を言ってくる読者がいたそうなのです。

つまり、樋口氏が本気で手塚治虫や夏目漱石を問題視して、今回の改正案に賛成していると。

……本当にあぜんとします。
そういう見方しかできない人たちが一定数いるならば、怖くて作品なんて作れませんよね。

もちろん、そういった人たちはごく一部だと思います。

樋口氏もコメント欄にて
「数千人の人がここを見てくださって、賛意を表明してくれています。
ノイジーマイノリティーにはわけのわからない人がいるけど、
サイレントマジョリティーはまともなんだと実感した次第。」
と書かれていますし。

ただ、表現や言論が弾圧されるのは
“ノイジーマイノリティー”の力であったりもします。

かつて、女優の桃井かおりが彼女独特のけだるい雰囲気で
「最近バカが多くて疲れません?」とこぼすCMがありました。

筆者は当時、
なかなかウィットに富んだいいCMだな、と思っていたのですが、
これに対して『視聴者を馬鹿にしている』とクレームをつけた人がいたそうです。

その結果、そのCMは放送中止になりました。

まあ、確かにいろいろな捉え方ができるCMでしたが、
それにしても無粋なクレームではないでしょうか。

「最近バカが多くて疲れません?」

これはクライアントが視聴者に“バカ”と言っている訳ではもちろんなく、
世間話の「枕」としてよくあるフレーズを
女優・桃井かおりがふと洩らすことによる『おかしみ』や『共感性』を表現しているに過ぎません。

どうしてそうストレートに受け取ることしかできないのだろう、と
当時ほんとうに悲しく思ったものです。

ちなみにこれには後日談があり、
しばらくして新たに差し替えたCMが流れ始めたのですが、そのCMで桃井かおりは
「最近“おりこうさん”が多くて疲れません?」
と呟いていました……

これほど痛快な“皮肉”もないだろうと筆者は拍手喝采を送ったものですが、
なんとこの新CMにはクレームはなかったそうです。

クレームを入れた人物は“おりこうさん”と言われて満足したのでしょうかねぇ?

このように、“皮肉”や“冗談”が通じない例というのは
実はめずらしいことでもありません。

前回ふれた、
高田渡の『自衛隊に入ろう』、
この曲も当時『自衛隊のキャンペーンソングとしてお願いできないか』という話があって、
高田氏は「冗談というものは伝わらないものだ」と嘆いたそうです。

“あなたが死んでも世界は平和ではありません”と歌った、
真心ブラザーズの「拝啓、ジョンレノン」という名曲は一時『放送禁止』になりました。

“コアなファン捨てても欲しいタイアップ”と歌った、
筋肉少女帯の「タイアップ」は発表当時、ファンから裏切り者と非難を浴びました。

“北朝鮮で遊ぼう あこがれの北朝鮮”とおちょくる(?)、
ザ・タイマーズの「あこがれの北朝鮮」は、今でも放送禁止です。

法律や条例で規制されなくても
表現の裏にある真意を読み取れない人たちが幅を利かせれば
萎縮や自粛ばかりがはびこります。

そうして、同じような顔ばかりが並ぶ寒々しい社会になり、
文化は力を失っていくわけです。

しかし一方で、規制に反対する側も
“有害表現”をそのまま受け取るようなものの見方しかできないようなら
規制されても仕方ないとも言えます。

規制に反対するにせよ、賛成するにせよ、ただお題目を唱えて相手を批判するのではなく、
お互いがノイジーマイノリティーに振り回されないように
メディアリテラシー」を高める努力が必要なのではないでしょうか。

なお、樋口氏はコメント欄にてこうも書いています。

> この構図はどんな分野にもあって、規制推進派もそうしたノイジーマイノリティーなのだと思います。
> マイノリティーの発言は奇矯だから目立つし響く。
> でもそこでマジョリティーが沈黙せず、根気よく発言や意思表示を続けることが大事なんだと思います。

今回の改正案は可決成立する可能性が高いとも言われていますが、
どういう結果になろうとも、議論はそこで終わりではありません。

“沈黙”せずに意思表示を続けていくことが今こそ求められています。
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